公演詳細
韓国オリジナルミュージカル『パルレ』とは?
キング牧師やロバート・ケネディが暗殺され「プラハの春」がソ連の戦車でつぶされた1968年。世界中の若者が「もっと違う未来を」と叫び、政治や社会に激しく異論を唱えた激動の年……当時全学連のリーダーだった藤本敏夫は、歌手で東大生の加藤登紀子と出会い恋に落ちる。
やがて、それまでの政治活動により藤本は逮捕収監され、二人は獄中結婚という形で世間の注目を浴びる。多くの仲間の挫折や苦悩とともに学生運動は終息、子どもの誕生、登紀子の歌手としての成功など、夫婦でありながら離ればなれに過ごした2年6カ月は、その後の生き方を構築するための濃厚な時間となった。
出所後、経済発展による環境破壊、巨大国家へと躍進する社会の様々な歪みに疑問を抱き、自然との共生を唱え、有機農業の重要性をいち早く世に問うた藤本は、苦労の末「大地を守る会」を設立。やがて自らも「農的生活」を実践するため、家族での農村移住を望むが、歌手として生きる登紀子は東京の生活を捨てることができない。理想と現実の狭間で露呈する夫婦の確執。激論の末、出した答えは“離婚”。
しかし、振り切った振り子は二人を別の結論へと導いてゆく―。二人を乗せた二隻の船は、運命の悪戯に翻弄されながら荒波の中を突き進む……。
文化の架け橋として
2012年月刊ミュージカル・ベストテン第6位作品
演出=チュ・ミンジュ、共同演出=鈴木孝宏
音楽=ミン・チァンホン、美術=ヨ・シンドン
上演台本・訳詞=保坂磨理子
『パルレ』とは韓国語で「洗濯」。昨日の垢を洗い流し、まっさらな心で明日へ向おうというのがこの作品のテーマ。ソウル【大学路(テハンノ)】で、2005年からロングラン、韓国ミュージカル大賞はじめ、数々の賞を受賞。本邦初演、再演とも各界各紙で高評価を得ました。差別や不当解雇等々、厳しい社会環境の中で懸命に生きる地方出身者ナヨンとモンゴルから来た青年ソロンゴ、二人を励ますソウルの路地裏で貧しくとも懸命に生きる市井の人々の哀歓を、笑いと涙で描く心温まるミュージカル。昭和の懐かしさ漂う舞台、ジャズやバラード、そして演歌まで、親しみやすい歌の数々が、笑わせ、泣かせ、現代人の心をグッと掴みます。主役2人以外の俳優たち6人が、1人何役も演じ分けるのも見所。砂漠のように干からびた現代社会への風刺を込めながらも、徹底的に楽しませ、生きる力を抱かせてくれるエネルギーに満ちた素晴らしい作品です。